標準報酬月額とは?
標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)は、厚生年金保険や健康保険における保険料計算の基準となる金額です。
この金額は、被保険者が毎月受け取る報酬(給与や各手当、残業代など)の総額を基に決定され、将来受け取る年金額や健康保険の給付額にも影響を与えます。
標準報酬月額の計算方法
標準報酬月額は、被保険者の報酬総額を一定の基準に基づいて区分したもので、具体的な計算方法は以下の通りです。
①報酬総額を計算する
被保険者が毎月受け取る基本給、各種手当、残業代などを合計します。
この合計額が「報酬総額」となります。
ポイントは各種手当も含まれるので、住宅手当や家族手当、通勤手当なども報酬額の中に含まれます。
通勤定期代は入社時から半年ごとに支給されることが多いと思われますので、自宅から会社までの距離が遠い場合、報酬総額が高くなるため厚生年金保険や健康保険などの社会保険料も上がる事になります。
②標準報酬月額の等級に当てはめる
上記で算出した4月から6月までの3か月間の報酬総額を基に標準報酬月額を算出します。
具体的には4月~6月の報酬総額の平均額を算出し、その金額を厚生労働省が定める「標準報酬月額等級表」に当てはめ、標準報酬月額を決定します。
等級表は報酬総額に応じて1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの32等級に区分されており、それぞれの範囲に対応する標準報酬月額が定められています。
この標準報酬月額を、その年の9月から翌年8月までの厚生年金保険や健康保険の保険料計算に使用します。
社会保険料の内、厚生年金保険料は将来の年金として支給されるため多少上がっても問題は無いと思いますが、厚生年金以外の社会保険(健康保険と介護保料険、雇用保険と労災保険)は、保険料が上がっても受けれるサービスは変わりませんので、心理的には損した気分になる人も多いようです。
そのため、4月~6月の残業時間の減らして、9月からの社会保険料を抑えようとする人もいます。
【例外】報酬に大幅な変動があった場合
報酬に大幅な変動があった場合には、標準報酬月額の随時改定が行われます。
随時改定は、次の3つの条件を全て満たす場合に行います。(以下、日本年金機構の公式HPより)
1)昇給または降給等により固定的賃金に変動があった場合
2)変動月からの3カ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合
3)3カ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上の場合
上記すべての要件を満たした場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4カ月目の標準報酬月額から改定されます。
厚生年金保険料の等級表
厚生年金保険料には、以下の等級表が用いられます。(日本年金機構の公式HPより)
例えば、報酬総額の3か月平均(=報酬月額)が308,739円の被保険者の場合、等級表から19等級(報酬月額 290,000円以上 ~ 310,000円未満)に該当するので、標準報酬月額は300,000円となります。
標準報酬月額が決まると、それに対応する厚生年金保険料も決まります。
19等級の項目をみると全額(会社+個人の負担額)は54,900円となり、個人が実際に負担する金額は27,450円である事が分かります。
※報酬月額(3か月平均)が290,000円の人と309,999円の人は、月2万円ほどの給料の差がありますが、負担する厚生年金保険料は同じという事になります。
標準報酬月額の使われ方と影響
下記に標準報酬月額の使われ方と影響を紹介します。
保険料の計算
厚生年金保険料と健康保険料は、標準報酬月額に基づいて計算されます。
標準報酬月額が高いほど、支払う保険料も高くなります。
上記の例の通り標準報酬月額が300,000円の場合、厚生年金保険料率の18.3%を掛けて月額54,900円(従業員と事業主で折半)の保険料となります。
将来の年金給付
厚生年金の受給額は、被保険者期間中の標準報酬月額の合計額(報酬比例部分)に基づいて決定されます。
標準報酬月額が高いほど、将来受け取る年金額も増えるため、現役時代の収入が老後の生活に直接影響を与えます。
健康保険の給付
健康保険からの給付(例えば、病気やケガで休業した際の傷病手当金や出産手当金など)も、標準報酬月額を基準に計算されます。
標準報酬月額が高いほど、これらの給付金額も高くなります。
まとめ
標準報酬月額は、保険料や給付額の計算基準として非常に重要な役割を果たしており、被保険者の報酬額に基づいて決定されます。
正確な標準報酬月額の設定と適正な保険料納付は、年金制度や健康保険制度の持続可能性を支える基盤となります。
これにより、全ての被保険者が安心して老後や病気に備えることができる社会の実現が目指されています。