「児孫のために美田を買わず」(じそんのためにびでんをかわず)という言葉は、幕末三傑の一人、西郷隆盛の言葉として広く知られています。
この言葉は「子孫のために過大な財産を残すことが必ずしも良い事ではない」という彼の考え方を示しています。(親友の大久保利通や政府首脳たちへの戒めという説もあります)
西郷隆盛は子孫に財産を残すよりも、人間としての教育や徳を重視しました。
自身の子供達に対してもこの教えを実践し、物質的な遺産よりも道徳や精神的な価値を伝えることに努めました。
またこれにより、子孫が自らの力で生きていくための強さと知恵を身につけることを期待していたのだと思います。
現代に置き換えると?
この考えは、現代社会においても非常に有益です。
親が子供のために財産を遺すことは一見良いことのように思われますが、実際にはその財産が子供の成長や自立を阻むことが多々あります。
具体的には下記4点がポイントになります。
1)自立の重要性
子供が自らの力で生きていく力をつける事が非常に重要です。
親が過大な財産を残してしまうと子供が自分で金銭を管理することや経済的責任を学ぶ機会を奪い、その財産に依存することで自立心や勤労意欲が損なわれ、悪い影響を与えることがあります。
親が裕福な2代目や3代目が遺産に依存する事で、あっという間に身代を潰してしまう事はよくある話です。
2)知恵と教育の重視
親が子供に対して本当に残すべきものは物質的な財産ではなく、知恵や教育そして価値観であるという考え方です。
これにより、子供がどんな状況においても自立して成功できる力を養うことができるようになります。
3)財産の儚さ
物質的な財産は、時代の流れにより失われることがあります。
しかし知恵や知識はその人自身の一部となり、失われることがありません。
親が本当に子孫のためを思うなら、持続的な価値を持つものを遺すべきだという教訓です。
幕末の時代を生きた西郷隆盛は、それまで町民に対して偉そうにしていた武士や公家が没落していく姿を見たことで、より財産に対する儚さを感じたのかもしれません。
4)家庭内騒動(争族)
過大な財産を残すと、財産をめぐって家族間の対立や衝突が生じることがあります。
特に複数の子供がいる場合は遺産分割をめぐる争いが発生しやすく、家族の絆が損なわれる可能性があります。
それまで仲の良かった兄弟が、親が無くなったことで遺産相続争いをして裁判まで発展する事はニュースなどでよく聞く話です。
まとめ
「子供のために」と一生懸命お金を貯めている親御さんがいますが、そのお金が元で遺産相続争いが発生したり、子供が働く気力を失うことになれば本末転倒です。
過分な金額を残すのではなく、当面は生活に不自由のない金額だけを残すのが、本当の子供にとって良いお金の残し方なのかもしれません。
具体的に子供に残す金額は、相続税が非課税になる金額を目安にすれば良いのではないかと思います。
非課税枠:3,000万円+600万円×法定相続者数
例)夫婦と子供2人の4人家族の場合、3,000万円+600万円×3人(配偶者と子供2人)=4,800万円